定年おやじの徒然散策

ついに60歳となりました。定年後のシニアライフを紹介します。

【読書感想】「国家と教養」(藤原正彦):教養の4本柱が大切!

「国家と教養」(藤原正彦新潮新書)は、紀元前に繫栄したギリシャ、エジプトや、世界大戦を戦った欧米諸国、日本の文明や文化に対して、各国、各時代の学者、知識人、教養人が国の繁栄にどのように関わったり、良い影響や悪い影響を与えてきたのかを考察し、教養の多様性やそれらの必要性を説いた本でした。

教養には①「人文教養」(文学や哲学)、②「社会教養」(政治、経済、歴史、地政学)、③「科学教養」(自然科学や統計を含む)に加えて、④日本が誇る「大衆文化教養」(大衆文芸、芸術、古典芸能、芸道、映画、マンガ、アニメなど情緒を養うもの)の4本柱がある。

国民が教養を失い、成熟した判断力を持たない場合、民主主義ほど危険な政治形態はない。教養を身につけるには、読書が主役。本を読むことで自己を向上させることができ、読書は人間としての愉悦、とのこと。

藤原氏が嫌悪するのは、「戦前、戦中、戦後とカメレオンのように変化した日本の教養層。あたかも自らは軍国主義に一貫して反対していたかのような顔をして、戦争後に戦争協力者を非難した教養層の人々。[卑怯を憎む]」

また、小泉政権構造改革郵政民営化や各種過剰な規制緩和アメリカの国益に利用された?])や、メルケル前首相のシリア難民の受け入れ政策[ヨーロッパを大混乱におとしいれた?]を否定的にとらえている。

一方、イギリスの教養市民層は原理や原則より「現実」をみつめたバランス感覚やユーモアがあり、彼らはフランス人を「現実を忘れ抽象的な論理に口角泡を飛ばす」、ドイツ人を「ドイツ人はどんな小さな過ちも犯さない。犯すのは最大級の過ちだけ」と揶揄していると、イギリスの教養人を好意的に述べている。

ただ、本を読むときは常に批判的に読むこと、自らの頭で納得しない限り信用しないことが大切ともいう。

藤原さんはイギリスに住んでいたことがあるためか、イギリス贔屓の内容になっているような気もした。

どのような本も納得できる部分、できない部分がある。参考になることを自身に吸収していけばよい。この本からは、教養の4本柱の分類が腑に落ち、参考になった。

定年退職して以来、図書館に通う頻度が増えて読書をする時間が長くなっている。読書は知識を吸収するとても良い機会である。本書の4本柱を意識してバランスよく本を選択して読書を楽しんでいきたい。